【ブログ更新】著者から教えてもらったこと。
著者のご要望により、あえて「非売品」として自費出版されたためご購入頂けないのが残念ですが、とても良い内容の本を取り扱わせて頂きました。
瀬川卓『引揚げの記』。(ISBN978-4-9906865-9-8)

本を作る目的は「売って儲ける」だけではないのだと、改めて著者から教えてもらった気がしています。「子供や孫たちに私の幼少期の体験を手記として残しておきたい......」という著者の気持ちが詰まった、とても内容の濃い作品になりました。
お約束で詳細を明かすことはできないのですが、本の価値や出版の目的は、特に著者にとってはそれぞれです。「作家になりたい」「自分の原稿に対する世間の評価を知りたい」「思い出を本というカタチに残しておきたい」「広く世に問いたいことがある」......という人もいれば、今回のように「家族のためだけに残しておきたい話がある」という方も世の中にはいらっしゃる。家族のためだけに書いた手記だから、あえて「売って欲しくはない」のだと。
ならば「私家版」で良いのではないかという意見もあるでしょう。ですが、本というカタチにして「出版」する以上、出版社/出版者には国立国会図書館に納本しなければならない義務があります。そして国会図書館に納本するということは、その本が半永久的に残される......ということになるわけです。
自費出版で非売品ですから、著者の意思を優先して、必ずしも「日本語表記ルール」に則ったものにはなっていませんが、逆にそれが良かったのだと、いまは思っています。また、できるだけきれいな本に仕上げるべく、装丁画にはファン・プロ所属の Samilleさんにお願いしました。さらに、戦中戦後の日本人社会を背景として、史実に即した内容のため、校閲にも専門家にご協力をお願いしました。
正直なところ、割り切って考えれば「そこまでする必要があるのか?」と自問自答を繰り返しながらの編集作業でしたが、昨日、著者から「きれいに仕上げてくれてありがとう。これでようやく、肩の荷が降りたよ」とお礼の電話を頂戴した時には、ちょっぴり目が潤んでしまいました。
実を言うと、この著者はとある研究分野の第一人者だった方で、過去に専門書を何冊も出版されていらっしゃるのです。けれど、「本名で出版すると、いろいろ面倒だから」ということで、筆名での自費出版を決心したのだと。
考えてみれば、こういう機会に恵まれることは案外、少ないのかもしれません。ゆえに尚更、ちょっとした優越感と達成感に、昨晩は鍋料理を突きながらちょっぴりお酒が過ぎてしまいました。......と、これは言い訳の記。